物書き編。何を書いて居るか/読んで居るか等。
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 静かな息遣いが聞こえ始めて、やがて、どこか投げやりな女の人の声が聞こえた。
 それはホールの全体から。

「今日は空が、綺麗ですね」

 読んでみて想起した物語は只一つ。
 けれど、作家さんが真似をしたものではきっとない。思い出した短編ではセカイが完膚なきまでに終わっていたから。

 ……小学生の時読んだ本だったろうか。ハードカヴァーの児童書で、短編集だった。調べてみたら、うお、その短編を書いた人は「ズッコケ三人組」の著者らしい。初版が九〇年だというから、もしかすると五十代に差し掛かって書かれたものかもしれない、脱線だがそう考えると凄い。
 ともあれ思い出した話の内容は、もう地上が放射能で汚染された日本、そこに一応生き延びている少年の話。
 主人公の男の子は家族と密かに保有していたシェルターで難を逃れているんですが、飲み水がじわじわと汚染されていって両親は下痢をし、まだら模様に皮膚を鬱血させ、毛髪が抜け、吐血して死んでいく。先にお母さんがヒステリーを起こす、当然の描写が当時はきつかった。
 お父さんは死ぬ間際男の子にこう云う。「もう外に出ても構わないぞ」、と。子供より先に死ねたのだから、せめて選択は自由にしてほしいと願い、彼自身もそう選んだのでしょう。
 男の子はそれでも少しの間外へは出ない。シェルターに搭載された演算機だけが、残りの生存可能日数をカウントダウンしていく。
 そこで通信機を使って、外部との接触を試みようとします。
 その時彼の心境は、何と描いてあったか覚えていません。けれど生き延びようとはしていなかった気がします。
 何日かの間は呼びかけても、何の応答もなく。けれどずっと続けている内に、地下鉄の構内に閉じ込められているという女の子の声を拾う。
 それから、腐敗していく両親の亡骸を置いて、まだ動く乗用車を動かして、地下鉄の入り口を目指して走っていった所で終わる。

 不特定多数の誰か、いや、そこに居ないかもしれない誰かに真摯に呼びかける事は、途方もなく切ないですね。夜中のラジオ番組のパーソナリティとか、無数に在るサイトやblogを更新する事によく似てる。夜空の星と会話しようとする事とも近いと思う。
 エントリーの冒頭の、少女の声は、つまりそういう状況でした。

 「二四〇九階の彼女」ではそれ以降、階層という名の細分化されたセカイを回って【塔】を主人公のサドリが降り切り、彼に外には本当の世界があり海があると教えてくれた「彼女」の云った事と、主人公とは別の棟から降りてきている筈の「彼女」自身の存在を確かめようとする展開になります。

 『所謂セカイ系のキノ』と、「今たまたまあっただけ」のカテゴリに素直に当てはまるので、ありがちだと評価する人は多いようだ。けれど俺は泣きました。もう其処で負けなんだと思います。
 言いたい事、伝えたい事を顕現させた一部が光っているのなら、他がどうであろうと成功だと思うから。偽善的な物言いですが、俺の評価方法は大抵加点式です。

 願わくば、イラストを抜きにして全てを読んでみたかった。
 俺が萌え絵に簡単に引っかかる若造なので、作家の事をきちんと評価出来ないのではなかったか――と今危惧しています。それだけ大事に読みたかったと思わせられる作品であったというコト。
 文が良い、絵が良い、だから作品が一つとして良いという評価ではなくて、可愛らしい仕草の少女の登場がかなりと云っていい程多かっただけに、文章単体としての評価がしてみたかった(今はイラストを含んで読んでしまったから、もうそうは出来ない)。そんな作品でした。

 面白かったです。楽しい時間を有難う御座いました。
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